ゆるゆる べんきょう

暇だから哲学・数学・物理学をゆるく勉強しているよ

JJ桜井 量子力学 4章

対称性に注目すると問題が解けることがある。クーロンポテンシャル中の粒子を考えよう。古典物理ではレンツベクトルが運動の定数であり、実際レンツベクトルを量子化するとハミルトニアンと交換する。適切にスケールさせると、レンツベクトルの各成分はLとの交換関係において閉じた代数を形成する。すなわちSO(4)の対称性をもつ。LとNを適切に混合させると二つの独立した「角運動量」を定義することができる。すなわちSU(2)×SU(2)と分解できることがわかり、簡単に解くことができる。これにより理参加したエネルギーが得られ、これはバルマーの公式と一致する。

 

空間反転、すなわちパリティを考察する。パリティ演算子πはユニタリかつエルミートであり、固有値は±1をとる。また、πはLやJとも交換する。パリティが奇なのはx,pパリティが偶なのはJ,Lである。エネルギー縮退がない場合はエネルギーの固有ケットはパリティ演算子の固有ケットである。例えば調和振動子基底状態パリティ偶)第一励起状態パリティ奇)。対称性のある井戸型ポテンシャルの場合にも、|S>、|A>というようにパリティ奇と偶が波動関数として得られる。ここから|R>,|L>を作ると、これは当然パリティ固有状態ではなく、両者を振動する。振動数は|S>と|A>のエネルギー準位の差に依存する。パリティ非保存の例としては弱い力の相互作用のハミルトニアンがあげられる。

 

非連続平行移動の対称性として結晶内のポテンシャルがあげられる。隣り合う井戸にのみ遷移が可能であるという近似(強く束縛された近似)を行うと、エネルギー固有値である波動関数は、「周期関数u_k(x)で変調された平面波」であると物理的に解釈される。波数k は-a/π~a/πを連続にとる。それに応じてエネルギー固有値も変化し、ブルリアン帯と呼ばれるエネルギーバンドを形成する。

 

最後に時間反転Θを考察する。Θはケットに作用する反ユニタリー演算子であり、ハミルトニアンと交換する。観測量に関しては時間反転で偶か奇であることが示される。実際、xは偶、p,Lは奇である。スピンを考慮すると、Θ^2 |j,m> = (-1)^m |j,m> が成立する。

JJ桜井 量子力学 3章後半

一般のj(≠1/2)に関する角運動量の議論。J^2、Jzの固有ケットで考える。梯子演算子を定義する。梯子演算子の性質を考慮すると永遠に梯子を上ったり下ったりできないことが示される。こうして同時固有ケット |j,m> に行き着く。

 

ところで、x × p で定義される L を考える。これはスピンが無視できる場合のJと一致する。このことは、任意の位置固有ケットをどのように変化させるかを調べることで正当化される。p が平行移動を表すなら L は回転を表すのである。さて、球対称な系を考えるため、極座標での表記 r-表記で考えるのがよい。この場合の波動方程式は nとl で示されるされた動径部分と、 lとm で示される角度依存部分に分離できる。角度依存部分は球面調和関数と呼ばれ解析的に解くことができる。

 

実際にシュレディンガー方程式を解く。すなわち、ハミルトニアンが p^2/2m + V(r) の形を考える。ハミルトニアンとL, Lzは交換する。動径方程式をと考えると量子数 l に対して有効ポテンシャル V(r) + l(l+a) hbar^2/ 2mr^2 という形の一次元の波動関数と解釈可能であり、 l ≠ 0 では原点に波動関数がこれないような形をしており、実際にs状態以外の状態で電子が原点付近に存在しにくい形であることを示唆する。さて、具体的な問題を考える。V=0すなわち自由粒子に関しては動径方向は球ベッセル関数である。V=0かつ、r=aでV→∞な深い井戸問題では、ベッセル関数のゼロ点が境界に来るように量子化されることがわかる。V=1/2mω^2r^2 な調和振動子では、やはり解析的に解ける(関数に名前はない)。調和振動子モデルは、球対称のようにr-表示で解くこともできるが、x-表示においては、H=Hx+Hy+Hzとかけ、一次元調和振動子がx,y,z 方向についた調和振動子として書けるので nx, ny, nzを量子数とする議論に帰着させることもできる。V=-Ze^2/r なるクーロンポテンシャルの場合は、動径方向はクンマー方程式の解なる合流超幾何関数である。エネルギー固有値は、主量子数 n を用いると、 E ∝ 1/n^2 を与える。これはバルマーの公式である。

 

 角運動量J1とJ2の合成を考える。基底ケットの選択として ① J1, J2, J1z, J2z ② J, J1, J2, Jz の二通りの取り方が考えられる。この二つの基底間の変換行列の要素 <j1j2m1m2|j1j2jm> がクレプシュゴルダン係数を表す。クレプシュゴルダン係数と同等のものとしてウィグナーの3j記号が利用されることもある。LとSの合成においてL・Sは②の基底で対角化される。

 

シュウィンガーの振動子モデルというものがある。二つの調和振動子の片方を上げ、片方を下げる個数演算子の交換関係は丁度角運動量の交換関係と同じ性質を持つ。この空間での量子数j,mを同様に定義して |j,m> 状態を真空状態から作成することができる。特にm=jとおくと、スピン1/2の2j個の粒子がスピンをすべて+に受けている描像を示す。アイソスピン周りでつかうらしい。

 

ベルの不等式。スピン1/2の2粒子からなる系においてスピン一重項の状態ケットは、2粒子間のz成分が互いに逆である(かつx成分も互いに逆である)という二つの可能性を重ね合わせた状態を表す。η中間子がミュー粒子対に崩壊(まれにしか起こらない)や陽子-陽子散乱が相当する。2粒子が巨視的距離に離れてもこの相関が保たれており、片方の粒子の測定によりもう片方の粒子の測定に影響を与える。この量子論的解釈はアインシュタインの局所原理に抵触するため、議論になる。隠れた変数が存在するという立場をとった場合と、量子論での立場で異なる予測をし、かつ実験で確かめられる数式がベルにより提唱された。結果は量子論が予測するものであった。

 

 

 

 

 

JJ桜井 量子力学 3章前半

軸k の周りの無限小回転dΦ に対応するケット空間の演算子として角運動量演算子 J_k を定義する。交換関係は [Jx, Jy] = i hbar Jz などが導出される。生成演算子同士が好感しないので非アーベル型の群を作る。

 

スピン1/2の系では、ケット空間の次元は2である。これは2成分スピノルであり、実際に期待値 <Sx> を計算すると実際にΦだけ実空間で回転させていることを確かめることができる。このように観測量はベクトル的にふるまう。一方、ケットは実空間の回転Φの半角しか回転しない。すなわち実空間を720度回転させないと元に戻らないのである。スピン歳差運動の例では、ケットの歳差運動の周期は、実空間の周期の二倍かかることになる。実際にこの効果を中性子干渉法という方法で実証することができる。

 

群の言葉を整理する。実空間の回転行列RはSO(3)という群と呼ばれる。反転操作を含めるとO(3)という群と名付ける。また、スピノルを使って(一つのパラメータで表現される)2x2の(ユニタリー・ユニモジュラーな)行列で回転を表すこともできる。実際この行列も回転を表し、SU(2)と名付けられる。SU(2)は一般の(ユニモジュラーでない)行列を作る群 U(2) の部分群である。先に見たようにSO(3)とSU(2)は同系であるように見えるが、実際には対応は2対1である(Rが与えられると対応するUは2つ存在する)。

 

話を幾分か変える。純粋アンサンブルと混合アンサンブルという概念を導入。アンサンブル平均は、密度演算子ρを導入することで、tr(ρA) で計算できる。ρの時間発展を調べると、 i hbar dρdt = - [ρ,H] とハイゼンベルグの運動方程式によく似た(しかし符号が違う)ものが得られる。これは古典統計力学におけるリウビル方程式の量子版ということができる。熱平衡時には、上記左辺が0になると期待される。これにより、ρとHは同時に対角化できることを示唆する。実際エネルギー固有ケットにより対角化するとρの対角化された各成分は、そのエネルギーを持つ分布関数を与える。エントロピーをσを -tr(ρlnρ)で定義し、エントロピーを最大にする事態を解くために、ラグランジュの未定乗数法を用いるとρの各成分はカノニカルアンサンブルを表す式で表され、熱統計学と一致する。これにより分配関数 Z=tr(e^-βH) とかけ、 ρ = e^-βH / Z とかけ、[A] = tr(e^-βH A)/Z という処方箋が得られる。

 

 

JJ桜井 量子力学 2章後半

シュレディンガー方程式をx-表示することで時間に依存する波動方程式が導出される。特に定常状態においては時間依存性が位相の回転で表されることを利用することで、両辺の時間依存項を消去することで時間に依存しない波動方程式が得られる。これを解くことでエネルギー準位が量子化されることが示される。さて、波動関数 ψ(x,t)の物理的解釈は、そのノルムは確率密度を表し、その位相(のナブラ)は確率の流れ j と密接に関わっていることがわかる。

 

シュレディンガー方程式の初等的に解ける問題がいくつか存在する。3次元空間の自由粒子は平面波で表される。調和振動子はエルミート多項式で表される。線形ポテンシャルではエアリー関数で表される。また、WKB近似と呼ばれる近似手法があげられる。これはポテンシャルエネルギーが変化する特徴的な長さと比べ、波長の長さがずっと短い(粒子的)時に使える。

 

さて、波動力学の用語であるところのプロパゲータ(始状態の波動関数に作用して終状態の波動関数を得るための積分演算子積分核)に注目する。この物理学的意味を考えると、これは以前のある時刻t0に正確にx'に局在していた粒子の時刻tにおける波動関数である。これをすべてのx'について足し合わせる(積分)することで、求める波動関数が得られるのである。プロパゲータは、ハイゼンベルグ表示における確率振幅<x'',t|x',t0>と同一であり、前述の物理学的な解釈とも整合的である。

 

この確率振幅に任意の数だけ恒等演算子を挟むことで経路積分の形に行き着く。古典論と異なるのは、(古典論では最小作用となる単一の経路に関する経路の積分をとるのとことなり)、すべての可能な経路の和をとらねばならないところである。

 

ポテンシャルの原点を変えるようなゲージ変換に対しては、波動関数は(tに依存する)位相のずれとして現れる。このことは電位の異なる筒を通る粒子が干渉縞をつくるという量子的効果を予測する。同様に、hbar/m が無視できないような場合、重力場による量子干渉を起こすことが予測され、実際に実験で確かめられている。

 

電磁気学におけるスカラーポテンシャルは前述と同様の効果である。ベクトルポテンシャルの任意性、すなわちゲージ変換は波動関数の位相部分に効いてくる(S→S+eΛ/c)となる。これは確率密度も確率の流れもゲージ不変であることを示す。一方、この位相の変化は量子力学的な干渉を予測する。すなわちアハロフノフボーム効果を説明する。

JJ桜井 量子力学 2章前半

2章は「量子ダイナミクス

 

時間発展のユニタリ演算子を求め、シュレディンガー方程式を導出する。ハミルトニアンと交換可能な演算子の固有ケットであれば解が容易に求まることを示す。この時期待値の時間依存性がないことから固有ケットは定常状態と呼ばれる。そうでない場合、期待値を構成する各項が振動しており、スピン歳差運動やニュートリノ振動を説明する。

 

状態ケットが時間変化するのがシュレディンガー表示ならば、演算子が時間変化するとみなすのがハイゼンベルグ表示である。ハイゼンベルグ表示は古典論から量子論を導くのに有用であるが、スピンのように古典論で対応関係がないものは推理するしかない。エーレンフェストの定理は古典的粒子のようにふるまうことが示される。

 

調和振動子の形のハミルトニアンは様々な物理現象で出てくる。生成演算子と消滅演算子を導入することでエレガントに解くことができる。振動子の時間的発展はベーカーハウスドルフの補助定理を利用することで、古典的粒子のものと同等のものを導くことができる。しかし、期待値をとると(当然)ゼロになる。古典的粒子と同じように振動するような状態ケットはコヒーレント状態とよばれ、消滅演算子の固有方程式を解くことで得られる。

 

 

 

 

 

JJ桜井 量子力学1章

1章は「基礎概念」

 

シュテルンゲルラッハの実験(Ag原子線を磁場で分離)を使って量子の特殊性を説明。ディラックによる数学的な定式化を示す。ブラ、ケット、観測量、完全系、エルミート性、射影演算、観測、位置表示、運動表示、両立する観測量、不確定性関係、交換関係、ガウスの波束。

 

特に難しいところはない。やはり量子論の特異な部分、すなわちスピンのz成分が2値しかとらないことから議論を丁寧に組み立てていく。シュレディンガー方程式はまだ出てきていないのに、平面波が運動量pでの固有状態であることが導出されるのがなかなかの見どころ。

2017-07: 哲学史を学んで

---- 哲学史を学んでいたということですが

はい。様々な哲学者の思想をざっと俯瞰してみたかったです。特に哲学から科学が分岐するところに興味がありました。また、自分一人で考えるとどうしても視野が狭くなってしまうので、前人の思想をお借りして思索を深めたいと考えました。

 

---- そもそもどのような思索をしたいと思っていたんですか?

私自身の生き方を確立したいのです。お金に関してはなんとかなる算段ができました。つまり「どうやって生きるか」はなんとか目途が経ちました。あとは「何のために生きるか」と「いかに死ぬか」が私の当面の課題です。いかにも陳腐な課題ですが、これは人によって答えが違うので私自身で考え答えを出さなければいけないといけないという義務感を持っています。

 

---- 何かしらの答えはでたのですか?

まあ。四つの要素「生命維持・認識・価値判断・行動」を意識しつつ日々を生きようと思っています。生命維持は主にお金を稼いで使って生活をすることです。認識は、どのようなバイアスがあるかを極力意識しながら、世界を自分なりに解釈し取り込むことです。価値判断は、自分なりの価値基準を持ち、認識した世界に対し「良い・悪い」「すべき・すべきでない」といった判断を行うことです。行動は、自分から世界へ働きかけることです。

生きる上で、全てのことをこれらと関連付け、一貫した自我を持ち続けていこうと思います。

 

---- 哲学史で印象に残っている哲学者を教えてください

アリストテレスです。学問の祖ですし、彼の論理学はごく最近まで色あせることなく使われ続けてきました。デカルトの我思う故に我有りもいいですね。カントも経験主義と合理主義を見事に調和させたこと、また彼の義務の倫理感は現代でも色あせないと思います。ヴィトゲンシュタインは哲学的問い、そのものにバッサリ切りこんだ点で興味深いですし、実存主義の面々サルトル・キエルケゴール・カミュなどは現代における問題点を浮き彫りにしていると思います。

 

---- やり残したことがあれば

いくらでもあります。機会を見つけてテーマを絞って勉強しなおしたいと思います。分析哲学実存主義あたりをやっておきたいです。中華思想はほとんどやっていないので時間があればさらっとやってみたいかな(それほど興味はないけれど)