ゆるゆる べんきょう

暇だから哲学・数学・物理学をゆるく勉強しているよ

JJ桜井 量子力学 3章後半

一般のj(≠1/2)に関する角運動量の議論。J^2、Jzの固有ケットで考える。梯子演算子を定義する。梯子演算子の性質を考慮すると永遠に梯子を上ったり下ったりできないことが示される。こうして同時固有ケット |j,m> に行き着く。

 

ところで、x × p で定義される L を考える。これはスピンが無視できる場合のJと一致する。このことは、任意の位置固有ケットをどのように変化させるかを調べることで正当化される。p が平行移動を表すなら L は回転を表すのである。さて、球対称な系を考えるため、極座標での表記 r-表記で考えるのがよい。この場合の波動方程式は nとl で示されるされた動径部分と、 lとm で示される角度依存部分に分離できる。角度依存部分は球面調和関数と呼ばれ解析的に解くことができる。

 

実際にシュレディンガー方程式を解く。すなわち、ハミルトニアンが p^2/2m + V(r) の形を考える。ハミルトニアンとL, Lzは交換する。動径方程式をと考えると量子数 l に対して有効ポテンシャル V(r) + l(l+a) hbar^2/ 2mr^2 という形の一次元の波動関数と解釈可能であり、 l ≠ 0 では原点に波動関数がこれないような形をしており、実際にs状態以外の状態で電子が原点付近に存在しにくい形であることを示唆する。さて、具体的な問題を考える。V=0すなわち自由粒子に関しては動径方向は球ベッセル関数である。V=0かつ、r=aでV→∞な深い井戸問題では、ベッセル関数のゼロ点が境界に来るように量子化されることがわかる。V=1/2mω^2r^2 な調和振動子では、やはり解析的に解ける(関数に名前はない)。調和振動子モデルは、球対称のようにr-表示で解くこともできるが、x-表示においては、H=Hx+Hy+Hzとかけ、一次元調和振動子がx,y,z 方向についた調和振動子として書けるので nx, ny, nzを量子数とする議論に帰着させることもできる。V=-Ze^2/r なるクーロンポテンシャルの場合は、動径方向はクンマー方程式の解なる合流超幾何関数である。エネルギー固有値は、主量子数 n を用いると、 E ∝ 1/n^2 を与える。これはバルマーの公式である。

 

 角運動量J1とJ2の合成を考える。基底ケットの選択として ① J1, J2, J1z, J2z ② J, J1, J2, Jz の二通りの取り方が考えられる。この二つの基底間の変換行列の要素 <j1j2m1m2|j1j2jm> がクレプシュゴルダン係数を表す。クレプシュゴルダン係数と同等のものとしてウィグナーの3j記号が利用されることもある。LとSの合成においてL・Sは②の基底で対角化される。

 

シュウィンガーの振動子モデルというものがある。二つの調和振動子の片方を上げ、片方を下げる個数演算子の交換関係は丁度角運動量の交換関係と同じ性質を持つ。この空間での量子数j,mを同様に定義して |j,m> 状態を真空状態から作成することができる。特にm=jとおくと、スピン1/2の2j個の粒子がスピンをすべて+に受けている描像を示す。アイソスピン周りでつかうらしい。

 

ベルの不等式。スピン1/2の2粒子からなる系においてスピン一重項の状態ケットは、2粒子間のz成分が互いに逆である(かつx成分も互いに逆である)という二つの可能性を重ね合わせた状態を表す。η中間子がミュー粒子対に崩壊(まれにしか起こらない)や陽子-陽子散乱が相当する。2粒子が巨視的距離に離れてもこの相関が保たれており、片方の粒子の測定によりもう片方の粒子の測定に影響を与える。この量子論的解釈はアインシュタインの局所原理に抵触するため、議論になる。隠れた変数が存在するという立場をとった場合と、量子論での立場で異なる予測をし、かつ実験で確かめられる数式がベルにより提唱された。結果は量子論が予測するものであった。