ゆるゆる べんきょう

暇だから哲学・数学・物理学をゆるく勉強しているよ

JJ桜井 量子力学 3章前半

軸k の周りの無限小回転dΦ に対応するケット空間の演算子として角運動量演算子 J_k を定義する。交換関係は [Jx, Jy] = i hbar Jz などが導出される。生成演算子同士が好感しないので非アーベル型の群を作る。

 

スピン1/2の系では、ケット空間の次元は2である。これは2成分スピノルであり、実際に期待値 <Sx> を計算すると実際にΦだけ実空間で回転させていることを確かめることができる。このように観測量はベクトル的にふるまう。一方、ケットは実空間の回転Φの半角しか回転しない。すなわち実空間を720度回転させないと元に戻らないのである。スピン歳差運動の例では、ケットの歳差運動の周期は、実空間の周期の二倍かかることになる。実際にこの効果を中性子干渉法という方法で実証することができる。

 

群の言葉を整理する。実空間の回転行列RはSO(3)という群と呼ばれる。反転操作を含めるとO(3)という群と名付ける。また、スピノルを使って(一つのパラメータで表現される)2x2の(ユニタリー・ユニモジュラーな)行列で回転を表すこともできる。実際この行列も回転を表し、SU(2)と名付けられる。SU(2)は一般の(ユニモジュラーでない)行列を作る群 U(2) の部分群である。先に見たようにSO(3)とSU(2)は同系であるように見えるが、実際には対応は2対1である(Rが与えられると対応するUは2つ存在する)。

 

話を幾分か変える。純粋アンサンブルと混合アンサンブルという概念を導入。アンサンブル平均は、密度演算子ρを導入することで、tr(ρA) で計算できる。ρの時間発展を調べると、 i hbar dρdt = - [ρ,H] とハイゼンベルグの運動方程式によく似た(しかし符号が違う)ものが得られる。これは古典統計力学におけるリウビル方程式の量子版ということができる。熱平衡時には、上記左辺が0になると期待される。これにより、ρとHは同時に対角化できることを示唆する。実際エネルギー固有ケットにより対角化するとρの対角化された各成分は、そのエネルギーを持つ分布関数を与える。エントロピーをσを -tr(ρlnρ)で定義し、エントロピーを最大にする事態を解くために、ラグランジュの未定乗数法を用いるとρの各成分はカノニカルアンサンブルを表す式で表され、熱統計学と一致する。これにより分配関数 Z=tr(e^-βH) とかけ、 ρ = e^-βH / Z とかけ、[A] = tr(e^-βH A)/Z という処方箋が得られる。