ゆるゆる べんきょう

暇だから哲学・数学・物理学をゆるく勉強しているよ

野家 科学哲学 第二部

第二部は科学哲学 第7章から12章

 

科学的な方法としての演繹・帰納アリストテレスにより整備された。特に演繹は論理学として知られている。帰納法は経験に基づく手法であるため、帰納法に正当化を与えることに多くの人が苦心している。これを踏まえた仮説演繹法に関しても同様の課題があった。一方、自然科学が経験科学である以上、仮説が反証される可能性は常に残っている。また、これらの道具立て(帰納法演繹法・仮説演繹法)はヒューリスティックを提示するわけでない。アダプション(by パース)などの別の発想力が新しい発見につながることを注意する必要がある。

 

ニュートンによる自然の定式化は「決定論的自然観」という古典物理学的世界像とでも呼ぶべきものが確立された。これに対して、第五公準による非ユークリッド幾何学の成立、ラッセルのパラドックスによる数学基礎での矛盾の発見、アインシュタインによる絶対運動・絶対時間の否定、量子力学による確率の介在する世界描像。これらの数学・物理学の危機により、決定論的自然観は突き崩されていく。

 

上記の危機に対して、科学哲学という分野が生まれた。これは、ウィーン学団による「論理実証主義」である。彼らは有意味な命題は経験的手続きによって検証可能でなければならないというテーゼにより科学的命題と形而上学的命題とを厳密に区別することを求めた。

 

論理実証主義を批判・克服しようとしたのがポパーによる反証主義である。ポパー帰納法の否定・検証に代わる反証の概念の提示をドグマとして、科学の本質は、推測によって仮説を提起し、その仮説を反駁しようとする繰り返しにあるとした。この「試行と誤謬排除」のプロセスこそが科学的方法の特徴であるとした。ポパーは科学理論の発展をダーヴィニズムに結び付けようとしたことでも知られる。

 

論理実証主義への別の反応はクワインによる「ホーリズム自然主義」である。彼は、論理実証主義のドグマである、分析的真理と総合的真理という二分法を否定し、論理学や数学などの形式科学と総合的真理に対応する物理学や社会学などの経験科学との区別はなく、全体がネットワークをなしていると考えた。それゆえ科学において実験的な検証や反証の手続きにさらされるのは個々の仮説ではなく、補助仮説や背景的知識を含めた理論全体であるとした。

 

論理実証主義に最終的に引導を渡したのはクーンによる「パラダイム論」である。我々が何かを観察する際特定の理論の色眼鏡をかけておこなっているという「観察の理論負荷性」といい、生の事実の存在を否定した。理論が別の理論によって打倒されるのを「パラダイム転換」としてとらえた。パラダイムの転換は検証や反証などの合理的な論証手続きに元図くのではなく、社会的要因や歴史的条件、心理的要素もかかわる複雑な様相を呈していると訴えた。これは科学者から大幅な反発を受けたが、パラダイムという言葉自体は現代にも残っている。

 

クーンの論争を経て、ラカトシュによる「リサーチ・プログラム」の方法論を提案するに至る。これはクーンの主張を合理的に再構成するように試みたものとみなされる。