ゆるゆる べんきょう

暇だから哲学・数学・物理学をゆるく勉強しているよ

2017-04: 集合論を学んで

2017-04 は集合論を主に学びました

 

--- 最近は集合論を学んでいたようですね

そうですね。正確にはBNGの公理的集合論を学んでいたというのが正確な表現になると思います。公理的集合論というのは、カントールが開拓した集合論(素朴集合論)を、論理学の方法で明確な形で定義したものです。公理的集合論といっても色々種類があって、代表的なのはZFCとBNGの二種類です。大体やっていることは同じですが。

 

--- 集合論を学ぶと何につながるのでしょうか?

ほぼ全ての数学の基礎になります。自然数といった概念や、関数といった概念など、どの数学でも当たり前に使っている用語を論理学から明確に定義して、つまり基礎付けできるのが一番のご利益ですね。あと、これは素朴集合論でもそうなのですが、無限という実在に迫れるツールというのも便利なところです。

 

--- 無限ですか・・・色々なパラドックスがあると聞きますが

そうです。それこそ公理的集合論が成立したきっかけになるのです。無限に迫るためにカントールは素朴集合論を用いましたが、そこでラッセルのパラドックスと呼ばれるような矛盾が発見されたのです。素朴集合論でもかなりうまく無限を捉えることに成功していたのですが、矛盾が発生してしまうとこれはだめだ、となります。そこで矛盾が生じないように正確に集合を定義していこうというのが公理的集合論となります。

 

--- では公理的集合論の内容は素朴集合論と同じということですか?

概ねそうです。素朴集合論で得られた各種の知見を包含しつつ、矛盾が生じないように正確に整備した、というのが正しいですね。まず論理学 --- 正確には1階述語論理 --- があって、それをもとにいくつかの公理・概念を導入して、各種数学概念の定義づけをしたり、各種の定理を証明していくという流れです。

 

--- 無限に迫るとはどういうことか簡単に説明ください

無限というととても大きな数字という認識があると思いますが、そもそも数字は、二つの意味でつかわれているのですね。一つは、「数えきれないほどの数」、もう一つは「並べきれない程の数」です。それぞれ基数、順序数という名前がついています。

 

--- ではまず基数について説明ください

りんごが4個、りんごが3個、合わせて7個というように使うときの数字です。四則演算が定義できたり、そこから有理数、代数的数、無理数が定義でき、微分積分などにつながるような数学的な広がりをもつ数字です。とても大きな基数の例では、「すべての偶数の集合」とか、「すべての有理数の集合」とかが考えられますが、どちらの集合のほうが大きいのだろうか?などの疑問に答えます。キーワードは 1対1 対応です。任意の二つの集合の基数は、その要素同士に1対1 対応 があるかどうかで決定できます。このようなやり方で無限の集合同士の基数を比較することができます。

 

--- 基数に関連する興味深い知見はありますか?

自然数全体の基数が代数学的数の基数と同じであること、また、自然数全体の基数が実数全体の基数よりも小さいということです。ようは無限にも大小関係があることが分かってきたのです。一番小さい無限の基数は、自然数全体の集合の基数で、大体考えられる基数はこれになります。そして、おそらく次に小さい無限の基数が実数全体の集合の基数です。

 

--- おそらく?ですか・・・

連続体仮説と呼ばれます。自然数全体の基数より実数全体の基数のほうが大きいのは示せるのですが、その中間となる基数が存在するかどうかがわからないのです。おそらくないだろう、というのが連続体仮説です。コーエンによって連続体仮説およびその否定どちらも公理的集合論で採用している公理系では証明できないことが示されました。つまり、連続体仮説を採用して数学を展開してもよいし、採用しないで数学を展開してもよいということです。

 

--- なんかもやっとしますね。

それはそうですね。とはいえこのような形で明確に答えがでたのは大きな成果だと思います。

 

--- では、もうひとつの順序数を説明ください。

徒競走での順位付けでの数字です。一位、二位、三位、・・・・というときに使う数字です。大きな順序数の例としては、「最初に奇数を全部並べて、その次に偶数を全部並べたときに、最初の偶数は何番目か」というのがあると思います。同じ自然数でも並び方を変えると(例えば最初に偶数、その次に3の倍数・・・)色々な順序数ができます。キーワードは initial segment です。つまり、順序数は、自分の前に並んでいる集合の大小関係で定義できるというものです。

 

--- 順序数に関連する興味深い知見はありますか?

無限集合では、基数と序数の四則演算が異なることが知られています。順序数は非可換だったりして、無限の基数とはかなり違う振る舞いを見せます。また、公理的には、順序数を使って基数を定義します。その意味で順序数のほうが本質的とみてもいいのかもしれません。

 

--- 話を変えましょう。公理的集合論にはなぜいろんな種類があるのでしょうか?

実際たくさんあるのが普通なのです。素朴集合論を包含しつつ矛盾が生じないようにすればよいだけなので。矛盾の解消方法にバリエーションを持たせた、ということです。一番有名なのはZFCで、これを使えば既存の数学すべてを基礎付けできる程の強力な公理系になり、多くの数学者はこの枠組みで数学をしています。BNGはそれよりもう少し強力で、かつZFCを包含しています。私がKindleで買った数学の本はBNGだったので私はこれで勉強しました。

 

--- 最後に、やり残しや備忘的なものがあればお願いします。

コーエンの強制法はまだ内容を見ていないのでそのうち時間があれば見てみたいです。あと、BNGとZFCの対応付け周りの理解がかなり怪しいですので、テキストブックで復習する時間がほしいところです。あと、選択公理とそれと同値な各種定理(整列可能定理・ツォルンの補題)の同値性は、さらっと読んだだけなので時間があるときにしっかり読んでみたいですね。