野矢論理学 4章
直観論理についての概説。排中律が否定されるとともに、古典論理では妥当であったいくつかの定理が成り立たないことを示す。例えば、次のものは直観論理では成立しない:否定除去型の背理法(¬Aを仮定して矛盾を示せば、Aが示せる)、二重否定除去(¬¬AからAを示す)。直観論理とは観念論であり、証明は構成可能性によってしめされるものだという言及。
上記の概説の元、直観命題論理である公理系LIPを紹介。意味論として、クリプキによる意味論を採用し、認識史・知識状態・「 ||- 」を使って意味論を与える。古典論理の真理値分析に対して、認識史分析がある、すなわち決定手続きがあることを示す(具体的に書いてあるが、煩雑なので読むのをあきらめた)。
また、古典論理に関して再度意味論を検討する。すなわち、モデルという概念によって意味論を再解釈した。
直観命題論理は、古典命題論理の部分系であるが、完全である。直観命題論理の妥当式は、古典命題論理の妥当式であるが、その逆は必ずしも成り立たない。
ここで「 ||- 」が出てきた。なるほど、確かに直観論理から借りてきた記号なのか・・・と腹落ちしたのであった
野矢論理学 3章
ラッセルのパラドクスが生まれる歴史を振り返る。パラドクスが起きるのは二階論理に相当することをしていることを示し、論理学と数学は異なることを強調。パラドクスに対して、3つの反応があることを示す。つまり、論理主義・直観主義・形式主義。
直観主義の背後には、無限に対する構成主義的見方があり、それは存在論的見方と異なることを証明。一方排中律等が成り立たないことを提示。片や形式主義はこのような姿勢を批判、形式的体系と、メタに対して構成的な手法を取り入れる立場であること、ヒルベルトがそれを主導したことを示す。しかし、ゲーデルにより、メタ数学にこのような構成方法では完全性および無矛盾性を示すことができないことが示されてしまったことが示された。一方この方針で公理的集合論が整備されたことを指摘。
以上、論理学を超えた(二階論理等に踏み込んだ)際には矛盾らしきものが発生するが、論理学にとどまる限り、完全性や無矛盾性が示される。
というわけで、命題論理の無矛盾性を示す。一般の形式的推論をつぶさに調べ、各行の導出式はすべてトートロージーであることを数学的帰納法で示す。したがって、推論の最後の行である定理式がトートロジーであること、すなわち、「すべての定理はトートロジーである」という健全性が示される。健全性が示されれば、トートロジーでない矛盾式は定理でないことが示されるので、無矛盾性が示される。
述語論理の無矛盾性は、述語論理を命題論理に還元する方法(影を作る)という形で、述語論理に矛盾式が存在すると仮定すると、命題論理が矛盾することを利用した背理法を用いることで示される。
なお、完全性に関しては、命題論理・述語論理のいずれも省略されている。
補足に、「=」を(数学ではなく)述語論理の公理であることを示す。
メタ論理での完全性や無矛盾性はテキストによって少しずつ説明が違うので読んでいてなかなか楽しいものがある。
公理的集合論は、一階述語論理で記述できており、かつ、自然数を含む体系でありまた数学を包含しているので、本文で触れられているように、数学には二階の論理が必要という説明はほんとか???と思う。
とはいえ、数というものが論理のたまものなのか、経験的に体得される自然科学的性質を持ったものなのかははっきりしない。ZFCで仮定される各種公理がア・プリオリなものかどうか?というのに還元されると思うのだが、私は答えがだせない。
野矢論理学 2章
アリストテレスのオルガノンの概説。256通りの三段論法のうち、24の正しいものを、4の正しいと思われる論法から証明したとのこと。一方、多重量子化や固有名、関係文を扱う上で問題があることを提示し、フレーゲの開発した述語論理へと話をつなげていく。述語論理は、オルガノンを包含し、また命題論理を包含するものであるという説明。実際に1~4格を述語論理で記述できることを示している。
述語論の意味論の説明。トートロジー→妥当式。解釈という意味付け(述語記号、個体定項の割り当て、議論領域)及び ∀、∃の意味を決定づける。
気になる記述
- ∧の解釈。命題関数をつなぐ∧はどのように解釈するのか?そのためにテクニカルな処置がとられるとのことだが、、、、
- 妥当式の全てがトートロジーというわけではもちろんありません
- 述語論理の機械的決定手続きは存在しない
述語論理の構文論。定項および自由変項を一括して項と呼ぶ。また、述語論理の公理系Lを提示。ドモルガンの法則の存在量化版の提示。完全性に関しては先送り。
まぁこの辺も初歩中の初歩。とはいえ、アリストテレスの三段論法をある程度ちゃんとした形で記載しているのは初めてみた。面白い。
2017-05 の勉強計画
5月は論理学をやろうかな
初歩的なやつ。1階述語論理+ゲーデルの不完全性定理。あと様相論理について概要を知りたいかも
教材は、持ってる以下の本を前半にやって、後半は図書館かKindleでなにかを調達しようと思う
定番
きちんとやる
https://www.amazon.co.jp/ゲーデル-不完全性発見への道-双書-大数学者の数学-北田-均/dp/4768703917/
絶対読めないけど、一応目を通す
https://www.amazon.co.jp/ゲーデルの定理-利用と誤用の不完全ガイド-トルケル-フランセーン/dp/4622075695/
2017-04: 集合論を学んで
2017-04 は集合論を主に学びました
--- 最近は集合論を学んでいたようですね
そうですね。正確にはBNGの公理的集合論を学んでいたというのが正確な表現になると思います。公理的集合論というのは、カントールが開拓した集合論(素朴集合論)を、論理学の方法で明確な形で定義したものです。公理的集合論といっても色々種類があって、代表的なのはZFCとBNGの二種類です。大体やっていることは同じですが。
--- 集合論を学ぶと何につながるのでしょうか?
ほぼ全ての数学の基礎になります。自然数といった概念や、関数といった概念など、どの数学でも当たり前に使っている用語を論理学から明確に定義して、つまり基礎付けできるのが一番のご利益ですね。あと、これは素朴集合論でもそうなのですが、無限という実在に迫れるツールというのも便利なところです。
--- 無限ですか・・・色々なパラドックスがあると聞きますが
そうです。それこそ公理的集合論が成立したきっかけになるのです。無限に迫るためにカントールは素朴集合論を用いましたが、そこでラッセルのパラドックスと呼ばれるような矛盾が発見されたのです。素朴集合論でもかなりうまく無限を捉えることに成功していたのですが、矛盾が発生してしまうとこれはだめだ、となります。そこで矛盾が生じないように正確に集合を定義していこうというのが公理的集合論となります。
--- では公理的集合論の内容は素朴集合論と同じということですか?
概ねそうです。素朴集合論で得られた各種の知見を包含しつつ、矛盾が生じないように正確に整備した、というのが正しいですね。まず論理学 --- 正確には1階述語論理 --- があって、それをもとにいくつかの公理・概念を導入して、各種数学概念の定義づけをしたり、各種の定理を証明していくという流れです。
--- 無限に迫るとはどういうことか簡単に説明ください
無限というととても大きな数字という認識があると思いますが、そもそも数字は、二つの意味でつかわれているのですね。一つは、「数えきれないほどの数」、もう一つは「並べきれない程の数」です。それぞれ基数、順序数という名前がついています。
--- ではまず基数について説明ください
りんごが4個、りんごが3個、合わせて7個というように使うときの数字です。四則演算が定義できたり、そこから有理数、代数的数、無理数が定義でき、微分・積分などにつながるような数学的な広がりをもつ数字です。とても大きな基数の例では、「すべての偶数の集合」とか、「すべての有理数の集合」とかが考えられますが、どちらの集合のほうが大きいのだろうか?などの疑問に答えます。キーワードは 1対1 対応です。任意の二つの集合の基数は、その要素同士に1対1 対応 があるかどうかで決定できます。このようなやり方で無限の集合同士の基数を比較することができます。
--- 基数に関連する興味深い知見はありますか?
自然数全体の基数が代数学的数の基数と同じであること、また、自然数全体の基数が実数全体の基数よりも小さいということです。ようは無限にも大小関係があることが分かってきたのです。一番小さい無限の基数は、自然数全体の集合の基数で、大体考えられる基数はこれになります。そして、おそらく次に小さい無限の基数が実数全体の集合の基数です。
--- おそらく?ですか・・・
連続体仮説と呼ばれます。自然数全体の基数より実数全体の基数のほうが大きいのは示せるのですが、その中間となる基数が存在するかどうかがわからないのです。おそらくないだろう、というのが連続体仮説です。コーエンによって連続体仮説およびその否定どちらも公理的集合論で採用している公理系では証明できないことが示されました。つまり、連続体仮説を採用して数学を展開してもよいし、採用しないで数学を展開してもよいということです。
--- なんかもやっとしますね。
それはそうですね。とはいえこのような形で明確に答えがでたのは大きな成果だと思います。
--- では、もうひとつの順序数を説明ください。
徒競走での順位付けでの数字です。一位、二位、三位、・・・・というときに使う数字です。大きな順序数の例としては、「最初に奇数を全部並べて、その次に偶数を全部並べたときに、最初の偶数は何番目か」というのがあると思います。同じ自然数でも並び方を変えると(例えば最初に偶数、その次に3の倍数・・・)色々な順序数ができます。キーワードは initial segment です。つまり、順序数は、自分の前に並んでいる集合の大小関係で定義できるというものです。
--- 順序数に関連する興味深い知見はありますか?
無限集合では、基数と序数の四則演算が異なることが知られています。順序数は非可換だったりして、無限の基数とはかなり違う振る舞いを見せます。また、公理的には、順序数を使って基数を定義します。その意味で順序数のほうが本質的とみてもいいのかもしれません。
--- 話を変えましょう。公理的集合論にはなぜいろんな種類があるのでしょうか?
実際たくさんあるのが普通なのです。素朴集合論を包含しつつ矛盾が生じないようにすればよいだけなので。矛盾の解消方法にバリエーションを持たせた、ということです。一番有名なのはZFCで、これを使えば既存の数学すべてを基礎付けできる程の強力な公理系になり、多くの数学者はこの枠組みで数学をしています。BNGはそれよりもう少し強力で、かつZFCを包含しています。私がKindleで買った数学の本はBNGだったので私はこれで勉強しました。
--- 最後に、やり残しや備忘的なものがあればお願いします。
コーエンの強制法はまだ内容を見ていないのでそのうち時間があれば見てみたいです。あと、BNGとZFCの対応付け周りの理解がかなり怪しいですので、テキストブックで復習する時間がほしいところです。あと、選択公理とそれと同値な各種定理(整列可能定理・ツォルンの補題)の同値性は、さらっと読んだだけなので時間があるときにしっかり読んでみたいですね。